■半世紀前の通信高校講座(化学:金属のイオン化傾向)

6 months ago
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酸素と水は私たち人類の生存にとって無くてはならない最重要物質だけれども、同時にあらゆる物質を劣化させ、さまざまな機械、道具を使えなくしてしまう最もやっかいな物質でもある。例えば水は非常に反応性が高い(普通そうは見えないけれども…)溶媒であって、時間軸を長くとればほとんどどんな物質でも溶かしてしまう。故に海水中には地球に存在するありとあらゆる物質(金や銀を含む)が溶けている。ここで言う「水に溶ける」という現象が即ち「イオン化」ということになり、そのイオンになり易さの度合いを比較したものが「イオン化傾向」だと考えれば解り易いだろう。

「かそかな、まあ、あてにするな、ひどすぎる、しゃっきん」という暗記言葉は、受験勉強で誰もが必死に覚えただろうが、水の主要な構成原子である水素を基準に考えれば「ひ」よりも前に位置する金属(特にアルカリ金属)は反応性が高い、と解る。このイオン化傾向の差が化学電池の基本原理となっており、昨今喧しいリチウムなどが重要な役割を果たすのはこのイオン化傾向からも容易に推察できる。さらに言うならこのイオンという状態そのものが、生命活動にとっても極めて重要な役割を果たしている。これは人体の血液中にある物質、血中イオン濃度を考えると解り易い。例えば血中の鉄イオン(ヘム蛋白)は酸素を運び、アルカリ金属、カルシウム・イオンは筋肉の収縮を制御している。このどちらに異変が起こっても人間は即死する。つまりイオン化という現象そのものが、生命を支えている化学反応の根源にある訳だ。

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